ATAC会員ブログ

ATACでは月に2回研究会を実施しており、会員はジャンルを限定せず、順番に日頃の考えをプレゼンしています。

そのプレゼンから会員投票で興味ある内容(エッセンスのみ)を毎月、掲載していきます。


「EV最新事情」  投稿者:坂井公一 投稿日:2022年11月28日

(1)   内燃機関からEVへの流れ

1908年にフォードから始まった自動車の大量生産はエンジンの効率改善、排気ガス対策を繰り返しながら、主に米国、欧州および日本がその技術を蓄積し、素材や工作機械、組み立て技術など幅広い産業にビジネス機会を提供した。しかし、100年を掛けて築いた「すり合わせ技術」は新規参入への障壁となり、内燃機関から排出されるCO2は地球全体の排出量の4分の1を占めている。欧州のCAFE(企業別平均燃費基準)規制ではガソリン1L当り全車種平均で25.4km以上の燃費が必要であり、更に厳しい基準が計画されているので、内燃機関だけでの対応は困難である。

原理的にはCO2を出さないEVFCV(燃料電池車)は温暖化対策と同時に新興国に参入の機会を提供する。また直近では石油において、ロシアや中近東による地政学リスク回避ともなる。特に地球温暖化対策は待ったなしであり、パリ協定に基づき、EU2035年にハイブリッド車を含む内燃機関の新車販売を全面禁止とし、米国カリフォルニア州も続く。先進国は法規制とEV購入や充電設備への補助金の両輪でEV化を推進している。

 

(2)   EV化のチャンスとリスク

2021年の世界のEV販売実績は660万台であり、複雑なエンジンの呪縛から解き放たれたEVにはすでにテスラ、BYD、上海汽車集団などが販売実績を伸ばし、さらに鴻海、百度、小米の台中勢やインテル、アップル、ソニーなどのIT系も参入を狙っている。ベトナムのビングループは2022年末に北米、欧州に初輸出するなど、新興国もEV生産のチャンスを伺っている。部材では中国CATLや韓国LGエネルギーなどがリチウムイオン電池に巨額の投資をしている。

 

一方で、電池の主要部材であるコバルト、ニッケル、リチウムは児童労働などSDGsに反する現場を産み、また石油以上に原材料が偏在し、新たな地政学リスクと資源枯渇のリスクをはらむ。

EVはエンジン車の3分の1の部品数だが、現在はリチウムイオン電池のコストが高く、補助金なしではガソリン車より価格は高くなる。また少ない部品数は、雇用の縮小とパワートレイン(駆動系)に関わる多くの中小企業の衰退を招く。

国内で自動車製造に関わる雇用者は104万人であり、内31万人

パワートレインに従事している。(経済産業省「工業統計調査(2020年確報)」)

自動車王国ドイツでもダイムラーやフォルクスワーゲンなどのEVシフトにより21.5万人が仕事を失うとされている。

 

    (上写真:テスラは世界で年間200万台体制を構築した)

  EVは走るスマホになる」と言い放つ人もいるが、時価総額が100兆円を超えるテスラは販売店を持たず、OTAOver The Air)によるメンテナンスは確かにスマホの技術を使い、2022Q3の純利益率は15.3%に達し、部品不足で生産出荷に窮する既存のメーカを凌駕する。

 

(3)   岐路に立つ日本の自動車産業

石油も鉄鉱石も産出しない日本メーカの自動車生産数は海外生産含めて世界の3割を占め、輸出金額の2割を稼ぎ、多くの中小企業を支え、関連ビジネスを含めて国内雇用の8%を守っている。

半導体不足やコロナ規制によるサプライチェーンの混乱は高い生産性をもたらしたジャストインタイムの根底を揺さぶり、CO2排出量はLCA(ライフサイクルアセスメント)で評価され、EUの国境炭素税の関門が待っている。国内で部材生産と加工に電気エネルギーを使うと、化石燃料中心で発電する高いCO2値(1kWh当り500g以上)で競争力が損なわれ、あるいは市場で排除される。

      25年の技術を凝縮したHEV(ハイブリッド)はその技術を持た

   ない陣営にPHEV(プラグインハイブリッド)含めて拒否されて

   いる。スキー競技や柔道で経験した日本に不利なルール変更と

   同じ構図が読み取れる。

(上写真:累計販売2000万台超えたトヨタのHEV)

 

EVは宅配や近場の交通、循環バスに強みを発揮し、中長距離はHEVが適することは証明されている。発電だけの小型エンジンを搭載し、主動力はモータとするシリーズハイブリッド方式が量産されており、PHEVでは電池残量が一定値に下がるまでは電池優先で走り、残量不足になってからエンジン駆動する制御方式も有り、EV以外の選択肢を残すことは大切に思える。

先進国がEVのみ新車販売許可する規制は合理性を欠き、消費者負担を増大し、安定した商用電力が得られない新興国での普及に無理がある。

 

 一律の規制ではなく、PHEVFCV含む各国の事情に合わせた自動車販売があって良いはずである

更に本年11月に欧州委員会は窒素酸化物やタイヤの摩耗や飛散する粒子物質も規制する新たな排ガス規制「ユーロ7」を提案し、乗用車は2025年、バス・トラックは2027年から適用される見通しだ。EVについても電池の耐久性に基準を導入する。

 

何よりもEVが自動車産業の大きな雇用を奪う上に、新規の規制導入は全車種の設計変更や膨大なテスト作業を要求し、自動車価格の上昇を招き、得策には見えない。自動車産業が幅広く大きな雇用を生み、多くの関連企業を育て、しかも成長性が高いだけに、公平で合理性ある産業政策が望まれる。



        「最近のISOについて」  投稿者:半埜賢治  投稿日:2022年10月10日

 

(1)はじめに

 ISO(国際標準化機構)1947年に設立された非営利法人で、国際規格を策定しており、現在ではISO1~90005まで定められています。

一方、電気・電子工学関連技術はIEC(国際電気標準会議)が定めており、ソフトウェアなどはISOと共同で開発しており、ISO/IEC TR90003と表記されています。

 

(2)日本での導入

日本では1987年にISO9000s(9001.9002.9003)が策定され、当初は導入に消極的だった企業も多くありましたが、ヨーロッパに製品を輸出している企業に対し海外からの認証要求が高まり、1992年頃から導入する企業が増加しました。

1993年には()日本品質審査認定協会(JAB)が設立され、認定機関(JAB)に認定された認証機関が誕生することになり、その後JABは日本適合性認定協会と名称変更されています。

(3)代表的なISO規格

QMS(品質マネジメントシステム:9001)の認証取得企業が最も多いですが、EMS(環境マネジメントシステム:14001)ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム:27001)も多くの企業で導入されています。

昨年、全ての食品等の事業者がHACCP(危害分析重要管理点継続監視システム)に取組むことが法律で義務付けられたこともあり、FSMS(食品安全マネジメントシステム:22000(QMSHACCPを組合せたシステム)導入企業は増加傾向です。

現在では、JIS Q 9001(ISO9001)JIS Q 14001(ISO14001)となっており、日本工業規格はISOと同じ内容となっています。

 

(4)認証機関数と認証取得企業数

 JABが認証機関を認定し、認証機関が企業を認証するという構図ですが、IAFによる相互認証制度があるため、現在、国内で認証機関は

JAB認定・・・39機関

JAB非認定・・22機関

となっています。

JABに認定されなくても、海外認定機関による認定で認証活動が可能ですので、海外認証機関の日本法人などはJAB非認定の機関が多くあります。

 QMS認証を取得している企業数は、2006年をピークに減少し、EMS2008年頃から横ばい或いは減少しています。

 

これは、2000年頃建設業界に「ISOが公共工事入札条件になる」との話が広がり、その後それが噂であったことが明らかになったことに加え、景気減速や2015年のQMS大幅改正並びにTOYOTAのように独自システム構築でISO不要となる企業が出てきたことが原因と言われています。

(5)ISO認証今後の趨勢

QMS23万社、EMS11.5万社で推移しており、現在は落ち着いてきており、今後大幅な減少は無さそうです。

ISMS:コロナによるテレワークなど、ニーズが増加していますので、数年でEMSと同程度の企業数になりそうです。

FSMSHACCP法律施行の増加要因がありますが、コロナによる業界先行き不透明要因もあり、見通しにくい状況です。

(6)まとめ

日本に導入されて30数年、一時のブームは過ぎ去りましたが、各社がISOをマネジメント力向上に有効活用される事を祈念しています。



光触媒について」 投稿者:山口 誠 投稿日:2022年9月5日

 

(1)  はじめに

 東海道・山陽新幹線ののぞみ号の光触媒式空気清浄機、近鉄電車・バスの抗菌処理表示、パナホームの一戸建て住宅の光触媒防汚処理壁面、日光東照宮の漆の抗カビ処理プロジェクトなど、世界に誇る日本発のクリーン技術として光触媒は、あちこちで、定着してきました。

 今から55年前に東大の本多・藤嶋研究室で、酸化チタンに水の中で光を当てると、水が分解されて酸素ガスが発生することを発見されたのが、光触媒研究の開始点でした。

 

(2)  光触媒の2大性質と6大機能

 酸化チタンという物質に光を当てると起こるのが光触媒反応ですが、この光触媒には、強い酸化分解力と超親水性という2つの特別な性質があります。

 強い酸化分解力とは、水を分解して酸素を発生させたり、どんな有機物もCO2まで分解させたりする力です。

 超親水性とは、水になじみやすくなって、水が表面に均一に存在することです。水を弾く撥水性(はっすいせい)と正反対の性質です。

 

 この2つの性質をうまく組み合わせて6つの有用な機能(①抗菌・抗ウイルス、②防汚、③防曇、④脱臭、⑤大気浄化、⑥水浄化)が生まれ商品化が進んでいます。

図1.抗カビ効果を活用 日光東照宮陽明門修理
図1.抗カビ効果を活用 日光東照宮陽明門修理

(3)  現在の研究例

 光触媒は、相手が大量の物を瞬間的に無くしてしまいたいといった化学反応には、不向きです。

 

 研究開発の一つの方向性として、微量でも我々が手を焼いているもの、困っている物質を相手にしています。ニオイ、除菌・抗菌、鮮度対策といった分野です。例えば、佐賀で朝に収穫されたイチゴをその新鮮さを保ったまま京阪神に移送する際には、JALカーゴと呼ばれる光触媒コンテナが使われています。

図2.光触媒コンテナ JALカーゴ
図2.光触媒コンテナ JALカーゴ

横浜の三菱ケミカルの研究所では、光触媒で水を分解することで発生した水素と大気中のCO2を反応させて、プラスチックや化学繊維の原料をつくる研究が進められています。人工光合成実験と呼ばれています。

図3.人工光合成実験 イメージ図
図3.人工光合成実験 イメージ図


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