散歩道:ATACのコンサルタントメンバーが日頃の難しい課題から離れて、日常の話題を綴っています。


 

本の匂い、珈琲の香り(続編)

 

以前、この「ATAC散歩道」に駄文を書いた丸善が再開されたと聞いて、京都に出た機会に訪問しました。

 

2005年に一度閉店したのですが、10年以上の時を経て再開された新しい店舗は大型商業ビルの地下にありました。(左写真)

 

昔と同じように専門書や洋書が広いスペースを埋めています。また高級文具や事務用品の展示・販売があり、地下2階には喫茶と軽食のコーナーもちゃんとありました。

31歳の若さで肺結核により没した梶井基次郎の代表作である「檸檬」(大正141月)に、「丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆彈を仕掛けて來た・・・」と書かれていたために、10年前の閉店時には作品の上にレモンを置いて帰る人が多発したと報じられていましたが、新しい店舗にはちゃんと文庫版の「檸檬」の横にレモンのバスケットと記念スタンプが置かれていました(下写真)。 美しくなった丸善は、しかし何かが違うんですね。これは外観ではないノスタルジーと言うべきもので、もう一度行きたいとの気持ちは不思議に湧きません。あれほどあこがれたコーヒーを飲まずに帰ってきました。

 ところで、昔読んだ懐かしい本はインターネットの「青空文庫」で無料で読めます。作者別、作品別の索引が充実していて、それらを見ているだけでも楽しいものです。また目が悪くなった現在、文庫本を読むのは厳しいですが、ネットですと大きな画面でとても楽に読めるメリットが有ります。

 

ありがたいことにほとんどの作品は 旧字旧仮名と新字新仮名の両バージョンがあります。機械作業で、スキャナーで読み取られただけの海外の電子ブックとは違い、ボランティアが手で入力したものです。

 

実はつい先日までこの無料の青空文庫は最悪のピンチに遭遇していました。それは他でもないTPPです。TPPでは著作権が作者の没後70年に改められる予定でした。米国の新大統領によりTPPが空中分解したおかげで、このまま著作権が70年に伸びなければ、山本周五郎(2018)三島由紀夫(2021)志賀直哉2022年)、川端康成(2023)が無料でネットで読める日が近くなります。

 

ところで「檸檬」の梶井基次郎1901年、大阪市西区土佐堀5丁目(現・西区土佐堀3丁目)で誕生。この場所はATACの拠点がある一般財団法人大阪科学技術センターから500mほどで、これも何かの縁でしょう。                           (坂井記)

 


 

ATAC25周年記念講演会録 

 

・講演 『強みを活かす ~違いを超えた人財育成~』

 

・講師: 白光() 代表取締役社長 吉村 加代子 氏 

平成 28年9月29日  於: 大阪科学技術センター大ホール

 

  ATAC25周年おめでとうございます。こんなに大きなイベントで話をする機会は初めてです。ためになるアカデミックなお話は天野先生にお任せし、私は私らしく、楽しく白光()の日常をお話しします。

 

 白光()1952年に 父吉村 博(故人)が鍛銅工具及びはんだこての製造販売を行う会社として創業しました。父は冶金の専門で自身のその知識、経験を以て戦後の日本の産業復興に貢献したいと強い思いをもっておりました。その熱い志と様々の関係者のご助力によりはんだ付け関連器機、溶解炉、金属鍛造加工等の関連企業を展開することができました。現在、はんだこてをはじめとする、温度コントロール機器のメーカーとして60カ国以上のお客様にご愛顧頂いています。ATACとの関係は父がOSTEC事業・MATE研究会(異業種交流グループ)に参加しておりましたが、その活動の中から出来た企業退職者によるコンサルティング集団と聞いております。長いお付き合いです。そして私の運命を変えたのがその当時のMATE研究会のメンバーです。

 

  社長業はドラマチック“169人の母親業

 

    この頃父が後継者について悩んでいたらしく、当時のATAC、MATEのメンバーがよってたかって私を社長に推薦したことからです。本日ご参加の中には心当たりのある方もいらっしゃると思います。当時のやわ、やわな新米社長をサポートいただき、ご関係の皆様にはとても感謝しております。絶対無理、無理と思っていた私の社長業も15年目に突入しました。社長と言うより、白光のお母ちゃんです。最近は「お父ちゃんに近づいているよ」と周りの評価もあります。生んだ覚えもないのですが169人の子供を私は持つことになりました。そして皆とても良い子です。

 

  ここで少し私の自己紹介をさせていただきます。6歳頃から音楽に熱中してきました。学生時代は本気でオペラ歌手になりたいと思っていました。何でそれが社長になったのか。と聞かれたら、それは運命かなと思っています。同じ運命なら徹底的に楽しもうと思っています。役員会で決定されたものの「次期社長は貴方です」と言われて「誰のこと?無理!無理!」と叫んだのを覚えています。私は音楽のことしか知らないし、社内では海外営業しか知らないのです。父のようにエンジニアでもなく、専門分野の勉強をしたわけでもなく父をはじめ役員の人たちは何を言っているのだろうかと思いました。創業者の父は、大学も理科系専門分野、戦時中は呉の海軍工廠で船舶建造の金属部材の設計・製造のプロジェクトマネージャーもしていたようで言わば製造業のプロであり、マネジメントのプロでした。創業30年が経った頃に科学技術長官賞、黄綬褒章をいただき“白光”を50年掛けて大きく育ててきた人です。一方音楽しか知らない私です。一月考える期間はあったものの直ぐに受け入れられることではありませんでした。ただただ、とってもポジティブな私なんですが、以外にまじめな面もあって一月の思考期間、社長とは何か?社長になるとは?とこれまでの人生で最大限に脳みそを使い一生懸命考えました。

 

  社長業は音楽指揮者と同じ!

 

    悩みまくっているある日、音楽好きの私の車内にはあらゆる分野の音楽を聴けるように揃えていますがその日は尊敬する“小澤征爾”指揮のモーツァルトの交響曲40番を聞きながら退社、高速道路を運転していました。小澤征爾は“楽団の帝王カラヤン”と違って楽団員に自分の思いを伝え美しい音色を出せるタイプの指揮者です。小澤征爾は楽器を全て弾ける訳ではなく、楽団もパート毎にプロの人がおり、曲への思いを伝え一人一人最高の音色を出せるように環境を作り、全員でより美しい音楽をつくり上げて行くのです。「・・・これって会社と似ている?社長も同じ?」ビビッと脳に電気が走りました。誰しも自信、経験の無いことはあります。当社であれば技術・ものづくり・営業・経理・総務等々信頼のおけるプロがおります。チームワークでお客様に感動いただくことが可能であることに気付きました。「テクノロジーも音楽も世界共通の言語やしね!」そう考え社長就任を決意しました。ところが就任一年目にITバブルが崩壊し、ジェットコースターが落ちるように業績は悪化し、当社始まって以来の初めての赤字となりました。父に[新しい記録をつくったねぇ]と妙にやさしく言われた記憶があります。

 

  社長業はビジョンを語り続ける。繰り返し,繰り返し again  again・・・

 

     流石にポジティブな私もバタバタとしていたその頃、ホスピタリティー世界一の評価を持つホテルチェーンの在大阪総支配人との出会いがありました。その教えられたことは“社長として白光をどうしたいのか決めること”そして“白光の進むべき所をイメージ”しビジョンを描き人財チョイスではなくセレクトし、そして自分の思い・ビジョンを社員に繰り返し伝え続ける。ととても大事な助言をいただき、この15年間これを守って来たつもりです。ビジョンは語り続けないと薄れます。チョット手を抜くと薄れて違う方向に行きかけます。

 

  “白光㈱”のビジョン-会社の質世界一を目指す

 

    現実は日々「ヒエッ!」とか「えっ何でやねん!」と言うことが毎日起きていてまだ、私が人前でお話出来る段階ではないと思います。

 

  会社を構成する社員一人一人の質を上げて行くというより難しいことに挑戦しています。質の定義は多々有りますが人の質を上げて行けば自然にホスピタリティレベルつまり、人を思いやる気持ちのレベルが自然に上がっていくものだと思っています。現在私は年間の半分近くを海外出張で費やしています。が一番大切で一番気にかかるのはやっぱり日本に居る169人です。

 

  新人は挨拶をたたき込まれる“いらっしゃいませ”と“四つの言葉“

 

    例えばわが社の新人社員がたたき込まれることは挨拶の大切さです。 ““いらっしゃいませ”と四つの言葉“おはよう”“ありがとう”“すみません”“お先に”社会人になって人として大事なこと(素直さと謙虚さ)をたたき込まれるのがわが社の教育です。

 

  “いらっしゃいませ” 会社に来訪される総ての方への挨拶

 

    “おはよう”           朝一番先に元気に挨拶をする

 

    “ありがとう”          仕事は常に誰かに手伝ってもらって出来るのでその感謝を表す

 

    “すみません”        人に何か頼む時、注意をされた時に言える

 

    “お先に”            先に食事をする時、先に退社する時に言える

 

  余談ですが最近気になるのは、親も学校教育でも教えてないのか余りに知らなさすぎると思います。知らないことが強いと言えなくないが同時にとても恥ずかしいことになります。

 

 わが社のボーイズ&ガールズにそのようなことが起きないよう先輩社員はしっかり教え込んでいきます。もう一つの大事なこと“給与はどこから出ているか?”まさか銀行のATMからとは思っていないでしょうが。形のうえでは会社からですが会社からでもなく、社長からでもなくお客さまからお給料が出ているのです。お客様はお金を払ってまで白光の商品を買って下さいます。そのお客様が払って下さったお金が社員みんなのお給料になり、チョット多い目に購入し代金を払ってくれた年はチョット多い目にボーナスが出る。そして白光の将来をささえる新商品開発のための資金とか、新しい工場設備を充実させることも出来る訳です。会社にとって大事なものは業種が違っても答えは一つです。それはお客様です。お金を払って白光の商品を買って下さるお客様に先ず感謝する。そしてその気持ちをホスピタリティー一杯にお客様にお返しをする。「そうでないと罰があたるよ」とこの数年言い続けています。白光のホスピタリティーレベルが少しずつ上がって来ているかと思うその証拠に白光感動ストーリーが増えて来ています。このお母ちゃんすごい親ばかでして内の子(社員)のそのストーリーを一つご披露させていただきます。

 

  飛び切り無口なR&D担当者の一生懸命

 

     6年程前にあったR&D担当のエビソードです。彼はエンジニアの中でもとびきり無口ですが体内には溶岩が流れているのではないかと思わせる熱いものを秘めた人です。その頃フランス担当の営業マンが2年近く足繁くかよっていた会社があります。世界中に進出している超グローバル企業(宇宙事業、通信事業等)です。同社では300台のライバル社のはんだごてを導入しており、その中で営業担当の執念と努力によりやっと5台の注文を取り付けました。その営業担当は狂喜乱舞、即空輸納入しました。ところが一つの不具合が発生し担当者による数日間のやりとりでは不具合の症状を再現できず解決に至りません。そこで彼はパリ行きを提案しチーム一丸となってそれを応援し、パリ直行便のチケットを手に一人で現地に向かいました。数日の悪戦苦闘、彼の一生懸命さが客先の関係者も巻き込み彼らの助言等をもらいながら帰国前日ようやく解決出来たのです。納入先担当者とともにラインに搭載し終え退社時には、お客様がハグをしてこの君の労をねぎらってくれたそうです。そして同席の現地営業担当もこれを見て“ウルウル”したそうです。その後もライン責任者の信頼を得て白光社製はんだごての納入取引が続き、現在その工場では、はんだこて300台中200台弱が白光社製となっています。帰国後、彼はこの不具合解決に対して社内のバックアップ体制に朝礼で“ありがとう”の感謝を述べました。この事はお客様の“お困り”を解決しお客様に喜んでほしいという純粋な気持ちが通じて、その結果その後の数字に繋がったと思っております。

 

  白光にとつて一番の宣伝方法、それは“口コミ”

 

 わが社にとってとても強い味方が口コミです。これは良いも悪いも影響力のある宣伝方法です。だからこそ社員一人一人の質の向上が必要です。このような白光らしいストーリーが起きた時全社で情報共有する仕組みを作っています。お手本の会社の“WAOストーリー”~を見習い社員みんなで考えて命名した“白光すごいやんニュース”です。私は内心中々センスがいいと思っています。ニュースの内容は多岐に亘りますが多くはお客様に「ありがとう」を言っていただいた内容です。もう一例我が子(社員)自慢その②です。

 

  メンテナンスサービス担当者がもらった感謝状二ユース

 

 当社は5年前から無償のメンテナンスサービスを行っています。この事業とはユーザー様に購入時の性能で使い続けてほしいという思いと同時にこれはメーカーの使命でもあると言う思いで始めました。そのメンテナンスチームメンバーの一人、彼がいただいた感謝状を社員みんなでシェアしました。その中ではラインでの機器を選択するうえで最も重視すべき点はアフターフォローだと述べられています。この感謝状を機にとても良い関係が繋がっています。例えば新商品の開発時にご意見をいただいたり、試作品の試用時に評価をもらったりと大変ご協力をいただいています。感謝状をもらった当の彼は発表時には社内で“おめでとう”と会う人毎に言われそのたび“ありがとう”を恥ずかしそうに連発していました。当社が会社の質世界一を目指すに当たって“ありがとう”がたくさん行き交ってほしいという思いを、私はしつこく、しつこく語っています。お客様からの“ありがとう”は結果、数字に繋がります。社内で行き交う“ありがとう”は当社の社訓の一つ「誠意和合」に繋がります。これは当社創業当時から受け継がれている「社訓①日々前進②誠意和合③健康と安全」の一つです。現在、当社はこの「誠意和合」を基本に一人一人の質を高めて行こうとしています。私が繰り返し、繰り返し掲げたビジョンを言い続ける中で、社員によく質問をすることがあります。「人の質が高いとはどんな人やと思う?その定義は何?」と聞きますと、社員の答えの一番は「“素直さ”と“謙虚さ”かな」と返ってきた時は、内心かなりビジョンが浸透してきたかなと思います。そして白光のお母ちゃんである私が一番うれしい瞬間でもあります。

 

  工場の製品づくりに魂が入っています

 

 現在、社員169名が日本におり、生まれも性別も国籍等も様々です。代理店は世界60ヶ国にあり、それぞれの文化、言語、宗教、肌の色等みんな違います。国内2ヶ所(堺、上月)の工場内では60ヶ国の国旗をつり下げており、まるで運動会のようです。毎朝全員に今日の生産品の納入先や出荷国について説明しています。例えば今日のラインはインドに行くことやシリコンバレー・あの電気自動車の生産工場がわが社の“300W”をとても気に入ってくれて30台注文が入ったこと等ラインで働く社員に製品の行く先等情報を出来る限り共有しています。何にも知らせずに作るだけよりも、担当者には今の製品がフランス、ブラジル等々世界各国に納められることを伝えています。そうすれば自ずと良い製品づくりに対する思いも出てきます。加えて家庭で自社製品の自慢話もしてもらいたいのです。お客様を思うと思わないとでは製品に込められる思いが全く違い、魂が入ります。

 

    このように情報を共有することで良い品を作ろうという思いが込められると不良は減ります。当社が目指す“人”の定義はたった一つです。質の良い“ホモサピエンス=人”です。人には“強み”“弱み”が有り、その違いを社員がお互いに認め合い、素直にオープンに補い合って行く組織が理想です。

(下の写真は堺工場に常時掲揚している取引先の国旗)     

 

白光では社員誰もが持つ個々の強み、弱みを分かち合いお互いを高めて行きます

 

 当社では、あるアセスメントツールを使って個々の強みを知るチェックテストを実施しています。自分の強みを理解するだけではなく、一緒に働く仲間それぞれの強みを共有しています。お互い言い合いながらワイワイ、ガヤガヤと楽しんでいます。因みにこのテストによれば私は“ポジティブ”“未来志向”“社交性”“コミュニケーション”包含“ですが、強みが分かると同時に最も弱いところ・欠けているところも出てきます。それは”慎重さ“です。これには自分でも笑ってしまい社員もまた大笑いしました。私は他のところで頑張るから社員の慎重さが強みの人にカバーしてほしいと頼みました。当社では人の弱みは突くものではなく、出来る人が補うものだと考えています。その方が誰もが安心して気持ち良く仕事が進められます。これが社訓「誠意和合」を基本にしたわが社の目指す組織です。要するに組織はジグソーパズルのようで社員の強みを組み合わせてきれいな絵を描きます。1年生は小さな小さなピースの一つです。その小さなピースの一つが欠けたら白光と言うきれいな絵は完成しません。周りの人が居て初めて個の一ピースが活かされます。

 

当社は様々なことを学び、経験した人が集う会社です。例えば音大出身でピアノ専攻の人や、薬学卒業、物理学専攻でブラックホール研究、バッグパッカーのトルコ文化研究者、CD出すほどのアコーディオン奏者とか・・・面白いことを喜々として経験してきた人たち一人一人が質を高めて行けばお客さまのご要望を関知する度数も上がります。そして商品開発にも繋がるのです。“会社の質世界一”をビジョンに定めて毎朝社員一同斉唱しているのは、「白光の一人一人が質を高めお客様と感動を共感出来る会社になろう」「いらっしゃいませ」と四つの言葉「おはよう、ありがとう、すみません、お先に」そして社訓を毎日毎日言い続けながら人の質について語り続ける。自分の強みを磨いて弱い所は助け会うこれが白光㈱の人財育成の基本です。まさに人財の“ざい”は財産の財です。この思いを外しては質の良い人財は育たないと思います。最近よく聞くのが女性の活用についてです。女性が働き易い職場、女性のための制度等、わざわざ女性のための制度を躍起になって整えるのもどうかと思います。お互いの弱みをカバーし合って強みが出せる仕組みを考えて行けば良いと思っています。つまりが働きがいのある環境・制度であれば良いと思います。白光パースンが日々それぞれの強みを磨き合う会社を目指しています。それには

 

    白光のお母ちゃんが一番ちゃんとしてないといけないと自分に言い聞かせています。

 

    子供が親の背中を見て育つのと同じように社員は本当に常に厳しく社長の背中を見ています。結局会社の善し悪しは社長次第という重い結論に至っております。私、白光のお母ちゃんは質の良い背中を社員に見せて行くことをより一層心がけて行かねばと心新たに決意をしている次第です。白光は白光らしくこの方法で質の良い人財を育てて会社の世界一を目指します。

 

    最後にATAC25周年おめでとうございます。私には身に余るチャンスをいただき、ATAC、MATE(研)にとても思いが強かった父が一番喜んでおり、この会場のどこかで聞いていているのではないか思います。お陰様で親孝行ができました。ありがとうございます。また、私はOSTECが掲げる「人と科学の架け橋」と言う言葉が好きでこの“架け橋”のお陰で日本のものづくりもとても進化しているのだと思います。私達のような大阪の小さなメーカーが一生懸命頑張っていることも応援していただいているのだと思っております。

 

  本日ご参加の皆様には最後までご静聴いただき、本当に心より感謝申し上げます。

 

                                                                                                                                           (山口まや 記)

 


 真田幸村

 いま、NHKの大河ドラマ「真田丸」と大阪城築城400年で、真田幸村が盛り上がっています。

大阪城のある一帯の上町台地には寺院が多くあり、寺町とも呼ばれています。

昔の真田丸もこの地域にあったのです。実は我が家の墓のある菩提寺もこの地区にあります。

先日も墓参りのついでに真田丸の遺跡をみてきました。

今まで毎年墓へお参りにいっていますが真田幸村のことで調べて見たいと言う気にはならなかったが、

やはりドラマの影響なのかその気になりました。

 わが家の墓のある寺院は丁度真田山公園の前にあります。

この公園は昔、戦時中には騎兵隊があった場所です。正面には騎馬兵の銅像が長い間ありましたが、

現在は台座のみがあるだけです。この地域には学校も多くあり、文教地区になっています。

丁度我が家の墓のある寺院の裏には高津高校があり、少し離れたところには学制改革の前は

女子高では大阪で一番と言われた清水谷高女(現清水谷高等学校)また、明星学園、

大阪女学院(旧ウイルミナ学院)などがあります。私の本籍もこの地域にありますが

住居表示が変更になったので、いまではどの辺りか見当がつきません。

 写真の真田幸村の像(下写真)と抜け穴は近くの三光神社にあります。

顕彰碑は明星学園のグランドの壁に最近設けられました。

その顕彰碑の前の寺院には真田幸村出丸の跡があります。

幸村の座像と「さなだ松」は少し離れた天王寺の一心寺の前の安居神社にあります。

興味のある方は一度訪れられては如何ですか。

                                                                                                                 (藪野 嘉雄)


EU離脱投票に見る世論調査の信頼性

 2014918日に実施されたスコットランド独立を問う国民投票は、独立賛成44.7%反対55.3%で否決されたのはまだ記憶に残る出来事でした。

 当時は、発表される世論調査の数字のバラツキが大きく、ともすれば建前を回答する世論調査より、お金を賭けるブックメーカーのオッズの方が信用できると言われたものです。

その時に、YouGovという調査会社が投票当日に1828人に対して実施した世論調査の結果が、独立賛成46%、反対54と、最も精度が高いものでした。

  今回のEU離脱を問う国民投票では、YouGovの投票日に行われた4700人に対する調査では残留支持が52%、離脱支持が48%でした。しかしながら、投票結果は残留支持が48.1%離脱支持が51.9%という、おそらく多くの人が予想していなかった結果となりました。

ブックメーカーのオッズを投票前の数週間、見ていましたがオッズでは賛否が拮抗したことは無く、常に大差で残留派が上回っていました

EU離脱を問う国民投票は、6237時~22(日本時間の2315時~246)に実施されました。

 次図は投票開始後の6232055分でのオッズを画面キャプチャーしたものですが、残留が1/8、離脱が7/1となっています

  この分数によるオッズの表現は「フラクショナル式(Fractional Odds)」と呼ばれるもので、右側がBet(賭ける)側の数字で、左側がそれに対して勝ったときにブックメーカーから支払われる数字です。本例では残留に8を賭け、勝てば(残留では)、左側(1)+右側(8)の合計9が支払われるということになりますので、日本的な賭け率では1.125倍となります. ちなみに離脱では1を掛けて、離脱に決まれば8支払われ、賭け率8倍を意味します. 投票時点では大多数の人が残留の勝利を予想していたことになります。

 624日の昼前にはBBCの開票速報で、離脱派が優勢となるとオッズは逆転し、日本時間11時52分には下図のように残留が6.5倍、離脱が1.17倍に急変しました。

 ところで、YouGov社の実施した世論調査の精度について、数理統計学的に考えてみます。

n:標本数、p:当該比率、d:標本偏差、λ:信頼水準 とすると、次式が成り立ちます。

この数式で計算すると、20149月のスコットランド独立に関する調査では1828人に対する調査であったため、信頼度99%での標本偏差は±3.0%となります。

 今回のEU離脱問題では標本数を4700に増やしたため、上式で計算すると標本偏差は±1.88%と求まります。したがって投票結果である残留支持が48.1%、離脱支持が51.9%というのはぎりぎり誤差の範囲とも考えられ、ブックメーカーのオッズよりはるかに信頼できると言えます。

 それにしても、4650万人の英国有権者に対して1万分の1に相当する4700人の調査結果で、誤差範囲±1.88%で結果を予測できる数理統計学の威力を十分に感じた今回の“騒動”でした。

企業も、社運を掛けた新製品の企画、開発、生産、発売前にはある程度のマーケットリサーチをするものですが、年齢層や性別などリサーチの対象や、そのサンプル数を適切に設定すれば、精度の高い分析が可能なことを今回のBrexit問題は示していますので、是非ATACに相談ください。

                                                                   (坂井公一)


ネット社会を支える250年前の数式

  一定年齢に達した方は、年に一度はドック検診を受けられると思います。

  血液検査で、特定の病気にかかっている人は98%の確率で陽性と診断されるが、同時にその検査では、その病気にかかっていない人も5%の率で陽性と診断されるリスクがあると説明を受けます。
同年代で同性の人がその病気にかかる比率は10000人当たり100人のデータがあるとします。
 あなたが2週間後に受け取ったドック検診の結果で、その病気について、陽性であり、「要精密検査」と書かれていました。
もしこのような結果を受け取れば、あなたは大変落ち込むと思いますが、実際に精密検査で病気と診断される確率はベイズ理論で以下のような数式で求めることができます。
 まずベイズ理論では、結果(データ)とその仮定(H)について以下の式が基本となっています。
http://4.bp.blogspot.com/-0vVaSrTxA70/VgsmsVXs3tI/AAAAAAAAAN0/lp_X2nRc7ng/s200/%25E5%25BC%258F-1.jpg
データDが二つの仮説H1H2からなる場合には、ベイズの定理は次式に展開できます。

 

http://2.bp.blogspot.com/-prSRyWeOI5c/Vgsnb-C0v4I/AAAAAAAAAN8/9j8MEmLMT9k/s320/%25E5%25BC%258F-2.jpg

 

この式では、各記号を以下のように定義します。
H1
:この病気に本当にかかっている
H2
:この病気にはかかっていない
D
:血液検査でこの病気にかかっている(陽性)と判定される

 

求めたいのは、陽性と判断され、実際に病気にかかっている人の率P(H1/D) であり、上式にそれぞれの数字を入れて計算すると約17%と求まります。

最初に説明を受けた「病気にかかっている人は98%の確率で陽性と診断される」という数字と17%の数字には大きな差があります。危険が0ではないので、もちろん精密検査を受けないといけないのですが、98%17%の差は気分的に大きな違いがあります。

 

 この理論を提唱したのはイギリスの牧師であり、数学者であったThomas Bayes1710-1761で、ベイズ統計学の始祖です。品質管理に広く用いられる「有意水準5%」などの厳密な統計学とは異なり、柔軟な適用性を持っていることが特徴です。

 

ベイズ理論を適用する事例をもう一つ紹介します。

  ある会社が創業25周年の記念行事を来年、盛大に実施することになり、「特別ご招待」する顧客を100人ほど選ぶことになりました。

「招待状」を乱発すると有難味が薄れますし、経費も多くかかります。かといって招待者を絞り込みすぎると欠席者が想定以上の場合、寂しい記念行事になります。そこで過去5年の招待会の出欠情報から参加の可能性が高い顧客を選び出すことにしました。代表例としてA社~E社について、過去の招待会の出席を○、欠席を×で表すと下表になり、ベイズ理論で来年の出席の可能性を計算すると右列の数字になります。顧客リストで期待出席率を計算し、数字の高い顧客より順番に選び出せばよいのです。

 

http://2.bp.blogspot.com/-vhU7eswReAo/Vgt8a-8NoyI/AAAAAAAAAOo/eihbZG1QU-c/s320/%25E5%2586%2599%25E7%259C%259F-4.jpg

100社、200社ならこのような計算をしなくても経験でリストを見ただけで選べますが、例えば数万人分のリストの顧客に対して、経費のかかる豪華な旅行パンフレットを郵送する時、できるだけ受注確率を上げるためには、日常の引き合いや過去の購買歴をデータとして受注確率を計算し、上位から設定数を選び出すことができます。

 

 このベイズ理論は「何かが起こる可能性はその事柄の過去の発生頻度を使って推測できる」という数式です。

 

 インターネットの世界では電子メールで特定の単語を抽出して迷惑メールをはじき出すスパムフィルターに使われ、現在のグーグルのネット検索の高いヒット率を支える基本理論に使われています。またネット通販でおなじみの、購入履歴や閲覧履歴からのレコメンデーション機能として応用されています。

 

 効率的なマーケティングや営業活動に有効ですので、興味ある方はご相談ください。                  (坂井公一)