ATACでは月に2回研究会を実施しており、会員はジャンルを限定せず、順番に日頃の考えをプレゼンしています。
そのプレゼンから会員投票で興味ある内容(エッセンスのみ)を毎月、掲載しています。
1、ISOの成り立ちと改訂の歴史
ISO(International Organization for Standardization)
国際標準化機構は1947年2月に設立されたスイスに本部を置く非営利法人で、国際規格を策定している。電気工学や電子工学分野はIEC(International Electrotechnical Commission)国際電気標準会議があり、一部はISOと共同で開発している。
日本では、1993年に認定機関である財団法人日本品質システム審査認定協会(JAB)が設立され、JABに認定された認証機関が誕生してきた(JABは2017年に公益財団法人へ移行)。
企業は、JAB(或いは海外の認定機関)に認定された認証機関(国内では数十社あり)に「認証を申請」し、導入した要求事項を順守しているかを認証してもらうことになる(下図)。
申請後、初回審査(第一段階、第二段階)を経て認証されると下記のマーク(並びに認証機関のマーク)の清刷りが送付され、その後は3年ごとの更新審査とその間の定期審査で適合性を評価される。
1987年に制定された初版では、9001(保証全般)・9002(製造・据付限定)・9003(最終検査及び試験限定)等の「ISOファミリー」と言われていたが、その後ISO9001に統一され、品質保証も品質マネジメントシステムとなり、2015年に現在の形となっている(2024年に気候変動に関する追記あり)。
また、初期には「管理/非管理」という文書/記録は、電子媒体含む文書化した情報の「維持/管理」と「保持」という表現になった。
2、現場での問題点
事例1:電気工事会社A社(QMS)
2005年登録、2017年に2015年版にマニュアルを変更したが、多くの下位規定(施工管理規定、品質管理規定等)改訂に手が回らず、「文書」「記録」「管理/非管理」の表現も残る(審査では「不適合」or「改善の機会」)。
事例2:化学メーカーB社(EMS)
使用頻度が殆どない下位規定多いが、規定削除の勇気は無い。
*2015年版QMSで必要な「文書」は品質方針・品質目標のみで、「プロセスの運用を支援するための文書化した情報を維持する」とあるが、「品質マニュアル」作成必要との表現ではない。
事例3:土木建築工事会社C社 総務部(QMS)
品質目標が、「インボイス方式の理解と対応」。
*品質目標は測定可能が条件だが、どうやって測定する?(審査では「不適合」となりそう)
事例4:流体制御機器メーカーD社 設計部(EMS)
環境目標が「力量強化し、効率よい設計活動」。
*環境目標は「(実行可能なら)測定可能」が条件(審査では「改善の機会」で留まりそう)。
事例5:食品関連メーカーE社(EMS)
内部監査で3年間(毎年1回)全部署実施、全て「適合」のみ。
*形式的内部監査になっており、「本当に実施している?」との疑念あるが、審査で調査は不可能。
*内部監査での「改善の機会」「肯定的事項」「コメント」は組織のマネジメント力向上に役立つ事項なので、勿体ない。
事例6:電気製品関連会社F社(QMS)
初回会議では「積極的にいろいろ意見を出して下さい」だが、最終会議前の「まとめ会議」で指摘に対し微妙な空気。
*特に「不適合」の決定は組織の同意が必要なので、慎重な検討が必要。
3,まとめ
ISOは「上手く使うと実質的な企業競争力向上に役立ち」ますが、今回は問題点をピックアップしました。次回、機会があれば「上手く使っている企業」も紹介したく思います。