ATACでは月に2回研究会を実施しており、会員はジャンルを限定せず、順番に日頃の考えをプレゼンしています。
そのプレゼンから会員投票で興味ある内容(エッセンスのみ)を毎月、掲載しています。
はじめに
企業において、ストレスによる判断力の低下や感情の暴走、疲労の蓄積で、経営の意思決定や組織の運営で支障が出る場合があります。ヨーガはストレス対処の優れた方法です。ヨーガがどのよいと思いました。
ヨーガとの出会い
私が就職したのはバブル最盛期。休憩も食事も取れないほどの激務に追われていました。夜中になっても仕事が減らず、過労でダウンする人が続出しました。「このままでは自分も壊れる。そして、こんなに働いても仕事が減らない仕組みそのものを変えたい。」その時に出会ったのがヨーガです。実践すると、確かに元気になり、過酷な職場を生き抜く力が湧いてきました。私のヨーガの先生は世界中を飛び回りながらも疲れ知らずの「超人」。私もそんな超人になり、仕事のしくみを変えて行きたいと思いました。
ヨーガは、「体操」と「呼吸法」と「瞑想」の3つで構成されています。もっとも重要なのは「瞑想」です。「瞑想」は、マインドフルネスや座禅と同じと考えても良いと思います。「体操」と「呼吸法」は、「瞑想」の準備の位置付けです。ヨーガと言うと、身体が柔らかいとか、綺麗なポーズというイメージがありますが、これは大きな誤解です。むしろ身体が硬い方が効果が出やすいと言われます。
ヨーガは、4000年前には行じられていたという話があります。モヘンジョダロの遺跡で瞑想する人の印章が見つかりました。仏教とも深い関係があります。最近では、心身の仕組みを整える技法として、世界中の医療・教育・ビジネスの現場で活用されています。
ヨーガの考え方(人間五蔵説)
インドのウパニシャド(奥義書)にあるヨーガの考え方を紹介します。「人間五蔵説」は、人間を5つの鞘(レイヤー)で捉えます。「食物鞘」、「生気鞘」、「意志鞘」、「理知鞘」、「歓喜鞘」です。 「食物鞘」は肉体で、「生気鞘」は呼吸・生命エネルギー、「意志鞘」は感情・知覚・思考、「歓喜鞘」は深い静寂・至福・自己の本質と考えます。
ヨーガの思想 (人間馬車説)
ウパニシャド聖典は、人間を馬車にたとえます。馬車には主人(魂)が座り、騎手(理知)が手綱(意志)を使って、馬(感覚器官)を制御します。ストレスが大きいと、馬(感覚器官)が暴走し、手綱(意志)では騎手(理知)は制御できなくなります。「感情の暴走」「判断ミス」の構造です。
ヨーガを企業経営に生かす
私は、長年企業で働き、さまざまな人を見て来ました。立派な人もいました。上司から叱責を受けると、それをそのまま部下のせいにして、部下を潰してしまう中間管理職もいました。プレッシャで正しい決断ができなくなる経営者もいました。
大きなストレスを受けると、「食物鞘」では身体は過緊張状態になり、「生気鞘」では呼吸が早くなり、「意志鞘」では感情の制御が難しくなり、「理知鞘」では判断力が低下します。そして、馬が暴走した状態になり、騎手が手綱で馬を制御できなくなります。
中小企業を訪問すると、疲れ切った社長さんがおられます。ヨーガをすると、元気を取り戻し、新しいアイデアが出て来ました。コールセンターなど高ストレス職場でヨーガを行うと、元気になるとともに、職場のコミュニケーションが改善しました。
ヨーガは、企業経営に生かせる手法です。ご関心のある企業様には、導入のご相談も承ります。お気軽にお問い合わせ下さい。
以上
一昨年、大阪企業家ミュージアムを訪問して、そこで販売されていた企業家名言集「大阪で開花した起業家の言葉集」を購入し、その名言集内容について五代友厚氏、松下幸之助氏、井植歳男氏、安藤百福氏の4名をご紹介しました。
企業家名言集には86名の方々の名言が収録されています。今回はそこに記載されている方々で更に10名の言葉や他の書籍資料で紹介されている言葉や内容の一部を航跡として紹介します。それぞれに含蓄のある言葉で、実業の現場で培われているものばかりです。私にとりまして、どの言葉も力強く励ましていただくものばかりです。
①伊藤喜重郎(いとうきじゅうろう)株式会社イトーキ 創業者
言葉「わしが、先例や。みなさんは あとから来ればいい」
航跡:発明特許品を世間に知らせ普及を図る仕事を思いつき、1890年創業。発明特許品のゼニアイキ(金銭記録出納機)をはじめ、世の中にないものを生み出してきた、「ゼムクリップ」および「ホチキス」という呼称は、イトーキの登録商標である。創業の精神は世の中にないものを生み出してきたイノベーションの軌跡であり、今日のイトーキにも脈々と受け継がれ、企業理念となっている。
②大社義規(おおこそ よしのり)日本ハム株式会社創業者
言葉「逆境こそ、我が道なり」
航跡:1942年に日本ハム株式会社の前身母体となる「徳島食肉加
工工場」を徳島市で設立。その後戦災による工場焼失、
1951年 に株式組織とし「徳島ハム株式会社」の設立を経たのち 「鳥清ハム」との合併を経て、1963年に日本ハムに商号を変更。
日本ハム球団のオーナーとなる事が決まった際、多くの反対があ
ったものの、意志を曲げなかった。日本ハムの選手に「やろうと
思えば何でもできる」、「できると思えば必ずできる」という言
葉を言い聞かせてくれていたという。酒好きであったが、日本ハ
ムの試合が行われている時は選手に失礼だからという理由でまっ
たく飲まなかったという。
③大原總一郎(おおはら そういちろう)
倉敷紡績株式会社、株式会社クラレの社長を歴任
言葉「人のため、他人のやれないことをやれ」
航跡:戦後間もない時期に、この倉敷の街の美しさを守ろうとた
街を後世に残そうと、私財を投じてリーダーシップを発揮た
地方の文化が廃れれば、日本全体の文化が廃れるという強い
機感も持って倉敷の美観を守った。また、1949(昭和24)年、ビニロン工業化を決定し岡山工場、富山工場を造る
あたり、資本金2.5億円の会社が14.4倍の36億円とい
う巨額投資を行った。当時の厳しい金融情勢の中、化学繊維事業
を軌道に乗せた。
④小林一三(こばやし いちぞう) 阪神阪急東宝グループ社長
言葉「金がないから何もできないという人間は、金があっても
何もできない人間である」
航跡:日本で初めて「ローン」という方法をとり大金がなくても、
分割して毎月少しずつお金を支払えば、家を買うことができる
ようにした。これで、たくさんの家族が阪急沿線駅の近くに引
越してきた。電車に乗る人が増えてくると、今度は人々が楽し
めるようにと、宝塚駅の近くに温泉を造った。温泉に入りに来
た人が歌や音楽を楽しめるように、1913年に「宝塚少女唱
歌隊、今の宝塚歌劇団をつくり、鉄道を起点に沿線の住宅開発、
百貨店経営など幅広く事業を展開し、今日の私鉄経営のビジネス
モデルの原型を作った。
⑤佐伯勇(さえき いさむ) 近鉄ホールディングス株式会社社長
言葉「独裁はするが独断はしない」
航跡:1951年、初めて社員からの生え抜きで7代目の社長に就任
する。「判断」という仕事について、判断する前には役職を問わ
ず社内の衆知を集め、いろいろな意見を集約した上で、最後は自
身で決断を下した。決めた後は、“独裁者”となって、部下にとこ
とんやらせる。世界で初めての2階建電車による特急車のビスタ
カーの生みの親でもある。近鉄を合併や路線延伸により私鉄最大
手へと押し上げた。
⑥島野庄三郎(しまの しょうざぶろう)株式会社シマノ創業者
言葉「和して厳しく」
航跡:26歳の時創業。決してごまかしのない対応で、創業2年目に当時技術的に難しかった自転車のフリーホイールの生産を始めた。従業員には前向きに挑戦する者には失敗に対し寛容で、前向きに挑戦しない者には厳しい指導を行いながらも、ものづくりの執念を教えるとともに従業員への愛情を注いだ。挑戦のスピリットは世界中のシマノの従業員に受け継がれている。
⑦田嶋一雄(たじま かずお)コニカミノルタ株式会社創業者
言葉「難ありありがたし」
航跡:1928年に操業を開始。国産初の二眼レフカメラ「ミノルタフレックス」を開発。1962年、アメリカ初の有人衛星に「ミノルタハイマチック」が搭載され、このカメラで写した地球の写真が世界中に配信され宇宙を飛んだカメラになった。この年、ミノルタカメラ(株)に商号を変更した。田嶋光学機器(Machinery and Instruments Optical by Tashima)からMINOLTAと命名した。
「稔る田」の意味も含んでいる。
⑧田鍋健(たなべ まさる) 積水ハウス株式会社社長
言葉「この船、沈没するかも知れん。しかしお前らわしに運命を
預けるか。わしも君らのために何とか難破せんようにやろ
うやないか」
航跡:1963年に代表取締役社長に就任当時は、累積赤字も膨らん
でおりまた委託販売中心の業界であった。この委託販売を直接
販売・責任施工方式に切り替えていき、勤務条件の改定に始ま
りガラス張りの経営、そして働いた分だけそれに見合った報酬
体系をつくりあげて士気向上に努めた。プレハブ業界トップと
なり、目覚しい成長を遂げた。
⑨広岡浅子(ひろおか あさこ)大同生命株式会社社長
言葉「現代が現実を重んずるだけに、夢を見る人が必要である。
夢を見なければ指導者たることはできない。」
航跡:明治維新で多くの財閥が傾いた時代に、自身が嫁いだ加島
屋は、両替商からうまく転身し加島銀行、尼崎紡績(のちのユニ
チカ)、大同生命、日本石炭会社を設立した。女性ではまだ相手
にされない時代であった為、表向きは夫が社長を務めたが、実
質の経営を行ったと言われる。女性実業家として大阪株式取引
所の理事などを引き受けた。
1901年(明治34年)、私財を投じて日本女子大学校(現 日本女子
大学)が開校し、「自発創造」「信念徹底」「共同奉仕」を綱領
に女子高等教育の先駆けとなり、優秀な女性を多く育てた。
ペンネームは“九転十起生(きゅうてんじっきせい)”
⑩吉本せい(よしもと せい)吉本興業株式会社社長
言葉「やたらに心を許すな、人を観ることや。時代は先取りで
す。誰の意見でも拝聴して実行するせんはアンタが決め
る。失敗はなんにでもつきもんで、恐れててはなにも
できまへん。」
航跡:1911年大阪北区にあった「第二文芸館」を買い受け、
そこで寄席経営を始めた。1913年には吉本興業部を設
立。この時、夫の吉兵衛とせいは知人の紹介で当時まだ売れて
いなかった芸人を集め、自分たちの寄席で芸を披露させた。
「花月派」というグループを結成、やがて当時力を持っていた
有力な寄席を買収し、大阪ナンバーワンの芸能プロモーターへと成長した。 以上
資料の出典:企業家名言集「大阪で開花した企業家の言葉集」、企業PR資料、ウィキペディア、閨閥学
1. はじめに
地球温暖化の影響により、猛暑や豪雨、渇水、農作物への被害など、私たちの日常生活を脅かす問題が深刻化しています 。こうした変化に対し、原因そのものを抑える「緩和(気候変動を止める努力)」の議論は活発ですが、同時に、すでに生じている変化に賢く備える「適応(変化した環境に上手に合わせる工夫)」の重要性も高まっています 。
本稿では、環境省や農林水産省の報告書に基づき、各分野で進められている気候変動適応策を整理するとともに、私自身が携わっている「里山整備活動」を通じた具体的な適応のあり方についてご紹介します。
2. 分野別に見る気候変動への適応策
国内では気候変動の影響を軽減するために以下の多様な適応策が進められています。
■ 1.農業:作付けの工夫と品種の選択
気温上昇に伴う水稲の品質低下を防ぐため、耐暑性の高い品種や早生品種への転換が図られています。また、果樹の栽培適地の北上、野菜栽培における遮光ネットの活用など、「適地適作」の再構築が基本となっています。
■ 2.水資源:雨をため、無駄なく使う
降雨の偏りや渇水に備え、ため池の再整備や雨水貯留が進んでいます 。都市部でも、屋上緑化や雨水タンクの設置により、ヒートアイランド現象の緩和や水害防止を図るなど、自然の力を活かした水循環が鍵を握っています 。
■ 3.森林・里山:自然の防災力を高める
豪雨時の土砂崩れ防止や保水力の向上のためには、森林の健全な管理が不可欠です 。間伐や下草刈りといった里山整備は、生態系保全だけでなく、気候変動に対する「しなやかな森」を育てる重要な適応策です。
■ 4.都市・生活環境:暑さに強いまちづくり
近年の猛暑対策として、街路樹や緑地の拡充、遮熱舗装、クールルーフ化などが進んでいます。また、避難所や公共施設における断熱・空調対策も「適応策」の一つです。
■ 5.健康・暮らし:熱中症・感染症への備え
自治体による見守りネットワークの強化や予防啓発に加え、個人レベルでも「水分・塩分補給」や「エアコンの適切な利用」を習慣化することが、命を守る適応策となります。
3. 里山整備の現状と持続可能性への挑戦
里山とは、かつて人々が薪炭や山菜を得るために手を入れてきた、人里に近い森林や農地のことです 。しかし、燃料革命や過疎・高齢化により放置され、現在は「里山放置林」として密生し、荒廃が進んでいます 。この里山を再び人の手で健全な姿に戻す「里山整備活動」は、防災力の向上のみならず、CO2吸収源の維持(緩和策)にも大きく寄与しています。しかし、主にボランティアによって支えられているこの活動は、現在多くの課題に直面しています。
■ 1.終わりのない自然との闘い: 私たちの活動は、自然の圧倒的な生命力との根競べです。刈ってもすぐに伸びる草木、数ヶ月で元に戻る藪。膨大な作業量を前に、時に『終わりのない無力感』に圧倒されることもあります 。しかし、光が地表を照らし、風が通り抜ける「明るい森」に変わる瞬間の達成感は、何物にも代えがたいものがあります。
■ 2.安全確保のリスク: 猛毒を持つスズメバチや、吸血被害を及ぼすマダニ・ヤマビルに加え、近年はクマの出没への厳重な警戒も欠かせません。これらの生物対策を講じつつ、足場の悪い斜面で作業を行うことは、精神的・肉体的に大きな負担となっています。
■ 3.高齢化と後継者不足: 私たちのグループも平均年齢は70歳を超え、熟練者の引退による技術途絶が現実味を帯びています。学生の体験参加は増えつつあるものの、一時的なイベントに留まることが多く、技術を継承し活動を背負う「次世代の担い手」の確保には至っていないのが実情です。
■ 4.地権者との調整: 里山の多くは私有地ですが、放置による境界の曖昧さや、相続未登記による『所有者不明土地』の増加が大きな壁となっています。連絡先すら辿れないといった法・権利関係の複雑さが、現場の意欲を削ぐ大きな障壁です。
■ 5.資源活用の難しさ: 伐採した木材や竹をバイオマス燃料等として収益化し、活動資金に充てたいという理想はあります。しかし、道なき急峻な山中から人力で材を運び出すことは体力・コストの両面から極めて困難です。これら構造的な課題が、資源循環を阻む最大の要因となっています。
これらの具体的な課題を一つひとつ取り除いていくためには、もはや個人の熱意だけでは限界があります。テクノロジーによる搬出の効率化や、行政と連携した権利関係の整理、そして地域全体で資源を買い支える仕組み作りを、これらを統合した新しい里山ビジネスの形を模索すべき時が来ています。
4. おわりに
「緩和なくして未来なし、適応なくして現在なし。」この言葉が示すように、気候変動対策には「原因への対策(緩和)」と「影響への備え(適応)」の両輪が不可欠です 。目の前の環境変化に向き合う里山整備のような地道な活動と、長期的な温暖化抑制の努力を一体的に進めることで、私たちは強靭で持続可能な社会を築いていくことができると考えます。
「死」について考える
ATAC会員 和田敏之 投稿日:2025年12月29日
「死ぬのが怖い」
「自分が消えてなくなるなんて想像したくない」私たちは普段、このような死に対する不安をなるべく見ないようにして生きています。しかし親の死、親戚の死、友人の死、一般的に年齢を重ねると「死」に直面する機会は好む好まざるに限らず増えてきます。そのため死に対する不安を解消するためには、自分なりの死に対する哲学を持つ必要があります。今回は、イェール大学での人気講義をまとめたシェリー・ケーガン氏の『死とはなにか』と、日本の知性・養老孟司氏のベストセラー『死の壁』という、東西の「死」に関する二大名著を、私たちが自分なりの死に対する哲学を持つためのヒントになればと思い読み解いていきたいと思います。この2冊を読んで、私なりの結論から申し上げますと、死は忌避すべき闇ではなく、生を完成させるための枠組みであるという事実です。以下その内容についてお話ししていきます。
まず、私たちの心を支配する「死んだらどうなるのか(怖い、痛い、寂しい)」という恐怖についてです。これに対し、両氏は以下のように述べています。
ケーガン氏は、徹底した物理主義(フィジカリズム)の立場をとります。人間は魂と肉体のセットではなく、高度な機能を備えたP(人格)を持つ「身体」という機械に過ぎない、と断じます。機械が壊れれば機能が止まるように、死ねば意識も消滅する。つまり、「死んでいる状態」を経験する「私」はそこにはいません。「無」であることすら認識できないのです。だから、死そのものは苦痛でも不幸でもあり得ないと説きます。
一方養老氏は、これを「一人称の死」と呼びます。「死」には三人称(他人の死=客観的事実)、二人称(親しい人の死=悲しみ)、そして一人称(自分の死)がありますが、養老氏は「自分の死など存在しない」と言い切ります。生きているうちは死んでいないし、死んだ時にはもう意識がない。自分の死は、この世のどこを探しても体験不可能な概念に過ぎないのです。つまり両氏が共通してのべているのは、私たちが恐れているのは「死そのもの」ではなく、生きている現在の意識が勝手に作り出した妄想に過ぎない。この理屈を腹落ちさせるだけでも漠然とした恐怖の半分は取り除かれるのではないでしょうか。
では、死は全く「悪いこと」ではないのでしょうか? ここでケーガン氏は「剥奪説」を主張します。死が悪いのは、死んでいる状態が辛いからではなく、もし生きていれば得られたはずの人生の喜びや愛、達成感等を死が奪ってしまうから悪いのです。私たちは「死後の世界」を恐れる必要はなく、「生の可能性が断ち切られること」だけを残念がればいいということになります。 養老氏の視点もこれに重なります。現代人が死を恐れる最大の原因は「自分」という意識が絶対的に重要だと信じすぎていることにあると指摘します。意識は「自分が変わらないこと」を望みますが、身体は常に変化し、死に向かっています。
「自分」という存在を、確固たる所有物のように握りしめているから、それを失うのが怖い。しかし、昨日の私と今日の私は細胞レベルで違います。私たちは日々少しずつ変化(ある意味での死)を繰り返しています。死を自然の摂理として、「大きな流れへの回帰」と捉え直すことで、執着からくる恐怖は薄れていきます。
二人の考えから、私たちがいかに死を否定的に捉えすぎているかがわかります。死への恐怖の正体は「体験することのない未来への不安」と「自分という存在への過度な執着」です。
では、これらを打破して「死に対して真剣に考える」とはどういうことでしょうか。それは、死なない方法を探すことでも、死後の世界に怯えることでもありません。「終わりがあるからこそ、人生という物語には形が生まれる」と認識することです。
ケーガン氏は、人生を「物語の形」として捉えることの重要性を説きます。ただ快楽の総量が多ければいいのではありません。苦難があっても最後には報われる、あるいは何かに貢献して幕を閉じる。そうした「人生の変化の形」こそが重要なのです。死が確定しているからこそ、私たちはこの物語をどう着地させるかという編集作業に真剣になれます。もし不死であれば、今日やるべきことには何の価値も生まれません。明日でも、1億年後でもいいからです。「剥奪」されるリスクがあるからこそ、今の瞬間に価値が宿るのです。
養老氏的に言えば、これは「死の壁」の向こう側を覗こうとするのではなく、壁の手前にある「生」を、身体を使って充実させることに他なりません。
死を真剣に考えるとは、逆説的ですが「死を特別視しない」という境地に達することかもしれません。ケーガン氏の言うように、死は単なる機能停止であり、恐れるべき未知の闇ではありません。そして養老氏の言うように、死は自然な営みの一部であり、忌避すべきタブーではありません。私たちが恐れるべきは、死ぬことそのものではなく、死への恐怖に足をとられて「今、生きていることの喜び」を享受し損ねること(剥奪されること)です。
①自分がいつか消える機械であることを認める。
②だからこそ、動いている今の機能(例えば思考、感覚、愛情)を最大限に楽しむ。
③過度な「自分」への執着を捨て、自然の一部としての役割を全うする。
「死」という締め切りがあるからこそ、私たちは今日という一日に、色彩と輪郭を与えることができます。否定的な壁を打ち壊した先にあるのは、虚無ではなく、かつてないほど鮮やかな「生」の肯定なのです。死を想うことは、絶望の予行演習ではありません。それは、最高に価値ある人生をデザインするための、最もポジティブな戦略なのです。
経営者・技術者こそ注目!「笑い」と「思考」のイグノーベル賞
ATAC会員 佐々木孔基 投稿日:2025年11月26日
皆様は「イグノーベル賞」をご存知でしょうか?
ノーベル賞のパロディとして、「人々を笑わせ、そして考えさせる」研究に贈られるユニークな賞です。その名前も、高貴な(Noble)ノーベル賞に対し、「ignoble(卑しい、不名誉な)」という言葉をかけたもの。
「ただのおふざけか」と思われるかもしれませんが、この賞は、私たち、特にモノづくりや新しいサービスを生み出す中小企業の経営者や技術者にとって、イノベーションのヒントを与えてくれる「思考の宝庫」なのです。
奇抜な授賞式
イグノーベル賞は1991年にマーク・エイブラハムズ氏により創設されました。授賞式は長年ハーバード大学で開催。まず行われるのは、観客による「紙飛行機投げ」です。
賞を手渡すのは、本物のノーベル賞受賞者たち。そして、壇上に散らかった紙飛行機を箒で掃除するのも彼らの役目です。
受賞者には60秒のスピーチ時間が与えられますが、時間を過ぎると、8歳の女の子が登場し、「もうやめて。飽きた!」と叫び、スピーチを強制終了させます。賞品もユニークで、謎のオブジェと、今やほとんど価値のない「10兆ジンバブエドル」紙幣(日本円で1円以下)が贈られます。
「笑い」の先に「思考」がある受賞例
このユーモアの裏にはどんな研究があるのでしょうか? 中小企業の皆様の「発想の転換」につながるかもしれない、いくつかの受賞例をご紹介します。
1. 「廃棄物」を「価値」に変える発想(化学賞 2007年)
日本人の山本麻由氏は、「牛糞からバニラの香りを抽出する」研究で受賞しました。
これは大量に発生する「廃棄物」から、高付加価値な「香料」を生み出すという、リサイクルやアップサイクルの究極の姿とも言えます。皆様の工場の「ムダ」や「廃棄物」も、視点を変えれば「宝の山」に変わるかもしれません。
2. 「日常の悩み」を「新製品」に変える探求(医学賞 1992年)
資生堂の研究チームは、「足の臭いの原因物質の解明」で受賞しました。彼らはその原因物質(イソ吉草酸)を特定。この研究は、後に多くの消臭製品の開発に大きく貢献しました。顧客のささいな「悩み」や「不便」に真剣に向き合うことが、ヒット商品開発の第一歩であることを示しています。
3. 「常識」を疑い「新しい市場」を創る力(経済学賞 1997年)
「たまごっち」の開発者である横井昭宏氏と舞田あき氏は経済学賞を受賞しました。受賞理由は「バーチャル・ペットの飼育に、世界中の人々から膨大な時間を費させた」功績です。それまで存在しなかった「デジタル生物を育てる」という新しい市場を創り出し、人々のライフスタイルにまで影響を与えたこの発明は、既存の枠組みにとらわれない発想の勝利と言えます。
4. 「好奇心」が「偉大な発見」を生む土壌(物理学賞 2000年)
アンドレ・ガイム氏は「生きたカエルを磁石で浮かせる」研究でイグノーベル賞を受賞しました。彼はこの「好奇心」から始まった研究をさらに発展させ、2010年、新素材「グラフェン」の発見により、本物のノーベル物理学賞を受賞しています。
一見、役に立たないような「遊び」や「好奇心」こそが、未来を変える大発見の出発点になるのです。
日本人は常連
実は、日本人はイグノーベル賞の常連です。「哺乳類の肛門呼吸の可能性」、「カツオ節の匂いの化学分析」など、日常の素朴な疑問や現象を、とことん真面目に研究する姿勢が世界中から愛されています。
まとめ:「思考停止」から抜け出すヒント
イグノーベル賞は、私たちに「常識を疑う楽しさ」と「探求する勇気」を与えてくれます。
日々の業務に追われると、私たちは「前例通り」「常識の範囲内」で物事を考えがちです。しかし、時代を切り開くイノベーションは、しばしば、この「一見ばかげた問い」から始まります。
皆様の現場にも、イグノーベル賞の種が転がっているかもしれません。
「なぜ、この作業は必要なのか?」「この廃棄物で、何かできないか?」
そんな「笑い」と「思考」のタネを、ぜひ大切に育ててみてください。
小説投稿サイトの楽しみ方
ATAC会員 永嶋良一 投稿日:2025年10月26日
1. はじめに
以前、筆者はこのブログで、「無料で紙の書籍を出版する方法」についてお話ししました。図は、その方法を用いて無料で出版した筆者の作品の一部です。
しかし、その後、ブログを読まれた方から、「作品をもっと簡便に公開する方法はないか?」というご意見を多数いただきました。そこで、今回はより簡単な「小説投稿サイトを使った作品の公開方法」をご紹介したいと思います。
2.小説投稿サイト
ご存じのように、今はネットを利用した小説投稿サイトが花盛りです。下は、生成AI(Microsoft社Copilot)を用いて作成した、各小説投稿サイトの比較表です。
現在は、『小説家になろう』、『カクヨム』、『アルファポリス』が三大小説投稿サイトと呼ばれていますが、この表のように、それ以外にも多くの特色あるサイトが存在します。この中で、著者はカクヨムを使って、作品をWeb上に投稿しています。
3. 小説投稿サイトの特色(カクヨムを例にとって)
では、小説投稿サイトの特色を、カクヨムを例にとってまとめてみましょう。
カクヨムは㈱KADOKAWAが運営する小説投稿サイトで、URLは以下になります。
筆者が考えるカクヨムの特色は以下になります。
(1)UIに特化・・とにかく簡単。すぐに「投稿」できる
(2)別ページで・・写真、スライドショー、動画の投稿が可能
(3)文学賞などへの公募が簡単
(4)小説に限らず投稿可能(日記、エッセイ、思想・信条、科学評 論、学校の講義メモ、学習のまとめなど)。例えば、今話題になっている「Webのセキュリティ対策」といったテーマでも、自分の考えやまとめといったものを簡単に投稿することができる
カクヨムを例に挙げましたが、上記は基本的にはどのサイトでも同じです。
4.小説投稿サイトと他の出版方法との比較
次表は筆者が考える、小説投稿サイトと他の出版方法との比較です。
出版方法は大きく、印税が発生する商業出版と、印税が発生しない非商業での公開に分けられます。小説投稿サイトは後者に位置付けられます。
表から、小説投稿サイトは印税が発生しませんが、『出版・公開の容易さ』、『訂正の容易さ』、『読者との交流』といった点で、他の方法よりも利便性がよいことが分かります。
5.筆者が勧める投稿ステップ
このため、筆者としては以下のような投稿ステップをお勧めしたいと思います。
① まず、小説投稿サイトに作品を投稿する
② 読者の意見を参考に適宜内容を修正する
③ 上記で作品の完成度を上げたのち、商用出版へ進む
6.生成AIの活用について
最後に、小説投稿サイトにおける生成AIの活用について私見を述べたいと思います。
「生成AIは普段使いをすべし」というのが筆者の考えです。これには、小説投稿サイトがうってつけです。
まず、作品の創作活動にAIを活用することができます。また、それ以外に、例えば、カクヨムですと、3項で述べましたように『別ページで・・写真、スライドショー、動画の投稿が可能』といった特色があるため、AIを活用して、作品のPR動画やアニメーションなどを作成し、それらを容易に投稿することができます。
筆者は、自身の公開作品をAIに読み込ませて動画を作成し、それを編集して自作のPR動画を作成しています。AIを使って、こういったことが簡単にできる点も、小説投稿サイトをお勧めする理由の一つです。
M&Aの知恵を「日常経営」に役立てる術
ATAC会員: 大崎 拓司 投稿日:2025年9月30日
筆者は、企業経営に役立つポイントとして、「製造業系の企業でM&A部隊のコアメンバーとして対応していたときに体得したこと」と、「その後に中小企業に身を置いて各種の企業革新に尽力した際に経験した内容」を基に、M&Aの際に検討する視点や対応すべき事項が日常の企業経営に大いに活用できるという考え方に至った内容をまとめました。
その本文はこちらのリンクに掲載しており、このブログはその紹介編となっています。ご興味のある方はぜひ本文のほうもご覧ください。以下のQRコードからもアクセスできます。
具体的には、M&Aで対象企業を買収監査(デューディリジェンス;DD)する際に検討する項目を参考にしつつ、中小企業が現在置かれている事業環境も踏まえ、これからの企業経営において必要となる視点と対応内容を列記しています。
第1章では、M&Aにおいて行われる検討事項やその流れを解説しています(表1.、図1.、図2.)。特に、企業を第三者的に評価するときのポイント、買収合意してから対応するべき事項、M&Aを行うにあたって気を付けるべき基礎的なポイントについて触れています。
第2章では、M&Aの視点をベースに、会社経営や事業運営において気を付けるべきことを取り上げました(表2.)。自社内での「いつもの自社の視点」では見えにくい問題や検討課題のあぶり出しの意識や観点を重視したものとなっています。
第3章では、これからの企業を経営していくにあたって、夢をどういう形で伝えるのかについて言及しています(表3.)。事業環境が大きく変わってきている今、これまでの延長線上の方法ではせっかくの自社の価値をうまく伝えることができなくなっている点に対応するための考え方を述べています。
記載している視点や対応策が少しでもお役に立てれば幸いです。
また、そのような取り組みにご興味がある場合は、ぜひお気軽にATACにお声がけください。
1、ISOの成り立ちと改訂の歴史
ISO(International Organization for Standardization)
国際標準化機構は1947年2月に設立されたスイスに本部を置く非営利法人で、国際規格を策定している。電気工学や電子工学分野はIEC(International Electrotechnical Commission)国際電気標準会議があり、一部はISOと共同で開発している。
日本では、1993年に認定機関である財団法人日本品質システム審査認定協会(JAB)が設立され、JABに認定された認証機関が誕生してきた(JABは2017年に公益財団法人へ移行)。
企業は、JAB(或いは海外の認定機関)に認定された認証機関(国内では数十社あり)に「認証を申請」し、導入した要求事項を順守しているかを認証してもらうことになる(下図)。
申請後、初回審査(第一段階、第二段階)を経て認証されると下記のマーク(並びに認証機関のマーク)の清刷りが送付され、その後は3年ごとの更新審査とその間の定期審査で適合性を評価される。
1987年に制定された初版では、9001(保証全般)・9002(製造・据付限定)・9003(最終検査及び試験限定)等の「ISOファミリー」と言われていたが、その後ISO9001に統一され、品質保証も品質マネジメントシステムとなり、2015年に現在の形となっている(2024年に気候変動に関する追記あり)。
また、初期には「管理/非管理」という文書/記録は、電子媒体含む文書化した情報の「維持/管理」と「保持」という表現になった。
2、現場での問題点
事例1:電気工事会社A社(QMS)
2005年登録、2017年に2015年版にマニュアルを変更したが、多くの下位規定(施工管理規定、品質管理規定等)改訂に手が回らず、「文書」「記録」「管理/非管理」の表現も残る(審査では「不適合」or「改善の機会」)。
事例2:化学メーカーB社(EMS)
使用頻度が殆どない下位規定多いが、規定削除の勇気は無い。
*2015年版QMSで必要な「文書」は品質方針・品質目標のみで、「プロセスの運用を支援するための文書化した情報を維持する」とあるが、「品質マニュアル」作成必要との表現ではない。
事例3:土木建築工事会社C社 総務部(QMS)
品質目標が、「インボイス方式の理解と対応」。
*品質目標は測定可能が条件だが、どうやって測定する?(審査では「不適合」となりそう)
事例4:流体制御機器メーカーD社 設計部(EMS)
環境目標が「力量強化し、効率よい設計活動」。
*環境目標は「(実行可能なら)測定可能」が条件(審査では「改善の機会」で留まりそう)。
事例5:食品関連メーカーE社(EMS)
内部監査で3年間(毎年1回)全部署実施、全て「適合」のみ。
*形式的内部監査になっており、「本当に実施している?」との疑念あるが、審査で調査は不可能。
*内部監査での「改善の機会」「肯定的事項」「コメント」は組織のマネジメント力向上に役立つ事項なので、勿体ない。
事例6:電気製品関連会社F社(QMS)
初回会議では「積極的にいろいろ意見を出して下さい」だが、最終会議前の「まとめ会議」で指摘に対し微妙な空気。
*特に「不適合」の決定は組織の同意が必要なので、慎重な検討が必要。
3,まとめ
ISOは「上手く使うと実質的な企業競争力向上に役立ち」ますが、今回は問題点をピックアップしました。次回、機会があれば「上手く使っている企業」も紹介したく思います。